インタビュー シューレ大学で探究するということ

シューレ大学はほかに同じような場所がないので説明がなかなかむずかしいしいところがあります。このページで学生・スタッフへのインタビューを定期連載していきます。場は、人がつくって初めて場になります。インタビューに答える彼らの姿を通して、シューレ大学を知っていただけたら幸いです。
new 2009-05-18 update

映像を通して人とつながり私をさらけ出す 石本恵美の巻

シューレ大学の学生やスタッフにさまざまな話を聞く、シューレ大学インタビュー。四人目は石本恵美さんです。石本さんの探究の中心は映像制作です。これまで、フィクション、ミュージッククリップやCM,シューレ大学の紹介ビデオ、ドキュメンタリーなど、さまざまな映像作品を制作してきました。

第4回 映像を通して人とつながる(前編)

09.05.18up
みなさま、本当にお久しぶりです。今回は、石本さんが監督した最新の作品である『土屋公献―平和と人権を守る弁護士―』や「シューレ大学国際映画祭―生きたいように生きる―」を開催しての思いなどを聞きました。

触れづらいことに触れる

――『土屋公献―平和と人権を守る弁護士―』*1について、この作品とこれまでの作品のつくりかたに違いはありますか。

今までつくってきた作品は、自分たちの思いを表現しようとして作った作品が多かったんですね。『土屋公献―平和と人権を守る弁護士―』は、自分たちを前面に押し出すのではなく、土屋公献さんの人生を描こうとしたんです。土屋さんは戦争を体験して、戦後は平和と人権のために戦うということを弁護士として力を入れて何十年もやってこられた方なんです。

私にとって戦争とか人権とかいうことは、気になって触れたいと思うけれども触れづらいことでした。しかし、この映像をつくることで、土屋公献さんを切り口に、そういうことに触れることができるというのがありました。また、同時に土屋さんの生き方に共感するところもあり、土屋さんのような生き方をしている人がいるんだよ、ということを素直に描いて世の人々に伝えたいという思いもありました。

映像作品『土屋公献―平和と人権を守る弁護士―』
『土屋公献―平和と人権を守る弁護士―』

映像を切り口に人とつながる

――石本さんは自分たちで企画してつくる映像だけではなくて、仕事として映像を制作するということもしていますよね。どんな思いをもって制作しているんでしょうか?

映像を作る経験を積み重ねたいというのがそもそもあります。依頼されてお金をもらうという形の映像制作を数年前から始めていますが、依頼されなければ、手をつけなかった内容であったり、分野であることが多いんですね。なにしろ経験がないから、毎回「こういう内容のビデオは初めてだな」ということばかりです。だからすごく緊張するんです。

でも、やっぱりやらなきゃ経験にならないし、やってみようと。ちょっと大変なんだけど、映像作りを通して人と関わる、あるいは知らなかったことに触れるということがうれしかったりします。自分が映像制作を通して人間として幅が広くなるとか豊かになれるかなという期待もあります。

――「シューレ大学国際映画祭―生きたいように生きる―」*2に石本さんは中心的に関わっていますよね。映画祭をつくることに今まで映像を作ってきた経験はどのように関わるんですか。

私はかなり人見知りなので、自分からいろんな人に声をかけたりとか、新しい世界に飛び込んだりっていうのがなかなか難しかったりするんです。でも、映像を切り口にしたらなんとか人とつながれるんじゃないかという思いがあります。映像やビデオカメラによって、人や物事との間にワンクッション入るのが、自分にとって楽なのかもしれないし、映像というツールを使うことで「それならば私も関われるな」と感じられることがあります。

映画祭を始めることも、もう少しタイミングが早すぎるとできなかったと思うんだけれども、今ならなんとかできるかなという感じです。以前は新しい人々との出会いをどこか怖れていたけれど、今は、真剣に映像づくりをしている人々に出会いたいと素直に思います。

シューレ大学国際映画祭の会場の様子
シューレ大学国際映画祭の会場の様子

――映画祭を開いてどうでしたか。

私は映像を見ることが好きだし、上映会って楽しいなって前から思っていたんですね。シューレ大学のスペース内に映画館をつくれるんだ! ということも実感しました。今回は原一男さん*3も関わってくれたり、『アヒルの子』の小野さん*4や『学校を辞めます』の湯本さん*5、にも来てもらったり、MIFS*6の作品も上映したりとか、そういうふうにいろんな人と出会ったりつながりあってつくったという実感がありました。

映画祭に来てくれた人に「とてもいい雰囲気のイベントでよかったよ」って言われることが多くて、それもすごく自信になりました。細かいことを言えば改善点もあるけれども、少しずつでもよくしていければいいなと思います。

今までシューレ大学でいろんなイベントをつくってきましたが、最近になって、本当に自分たちがつくりたいように細かい部分までイベントをつくることができるようになってきているという実感があります。お客さんを自分たちのスペースに招いて、おもてなしをするような喜びというのもありました。

シューレ大学国際映画祭で語る石本さん
シューレ大学国際映画祭で語る石本さん

<つづきます>

『土屋公献―平和と人権を守る弁護士―』*1 弁護士とは平和と人権を守るものである――「それは弁護士の本音でなければならない」と言う、土屋公献弁護士の生き様に迫るドキュメンタリー。2008年夏制作。「シューレ大学国際映画祭―生きたいように生きる―」にて公開。DVDを希望する方はシューレ大学までお問い合わせください。
シューレ大学国際映画祭―生きたいように生きる―*2 2008年8月にシューレ大学主催で初開催された映画祭。海外からは韓国やロシアの団体からの作品、国内からは原一男監督の映画、監督推薦映画、公募作品を上映した。今年の映画祭はこちら
原一男さん*3 映画監督。代表作に『さようならCP』『ゆきゆきて、神軍』など。2007年の公開イベントをきっかけにシューレ大学のアドバイザーとしてかかわって頂いており、上記の映画祭の特別選考委員でもある。原一男さんのwebサイト→Docu×Docu ドキュメンタリーという生き方
『アヒルの子』の小野さん*4 自らの傷や家族に鋭く切り込んだノンストップアクションドキュメンタリー『アヒルの子』。監督・主演は小野さやかさんで、映画祭では原監督推薦作品として上映された。映画祭には全日参加して頂き、フェアウェルパーティではすっかりシューレ大学に溶け込んでいた。
『学校を辞めます』の湯本さん*5 学校という職場が好きだが辞めざるを得なくなった過程を描いた『学校を辞めます』。監督・主演は湯本雅典さんで、公募作品として選考された。昨年に引き続き、2009年の映画祭にも出品されています。
MIFS*6 モスクワ国際フィルムスクール。ソ連崩壊の中、映画監督と10代の子どもたちが設立した。映画、演劇、メディアを専門で学ぶ世界でも珍しいオルタナティブスクール。
これまでのインタビュー
私であるために絵を描く 山本菜々子の巻
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